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ボーイングを書く

ボーイングを書く

主にオーケストラの楽譜にボーイングやスラーを書き込むときのお話です。
アマチュアのオーケストラのトレーナーを頼まれて行くことがあるのですが、たまにになることのひとつが”楽譜が汚い”ということです。全ての方がそうだとはもちろん言いません。でもそういう譜面に出くわすことが少なくありません。
汚いというのは汚れて汚いというのではなく、ボーイングやスラーの書き込み方が乱雑で汚い、ということです。
スラーを途中で切る時もスラーの真ん中辺に薄く一本縦線を引いただけとか、ダウンがアップに変更になっても消しゴムを使わずダウンのマークをグチャグチャっと黒く塗りつぶしてその上のあたりにアップのマークを書きたしたり、それすらせずにそもそもボーイングを書かないとか・・。

汚いボーイングの楽譜例えば左の譜面はたまたま見つけた典型的な汚い譜面なのですが、出だしの音がアップなのかダウンなのかすら判然としません。これでは弾けるものも弾けませんね。特にオケは指揮者や他のセクションに気を配ったり忙しいです。

学生オケの指導でこういう譜面を見た時は「ただでさえ下手なのにこんな汚い譜面見て弾けるわけないだろ!」と超上から目線で一喝して差し上げることもできるのですが(笑)、社会人オケとなるとそうもいきません。初心者が相手なら言い方を気をつけてなんとか・・、でもベテランが相手だともうスルーですね。嫌われたくないし・・。

さて、私がアマチュア時代に学生オケで弾いていた頃こんなことがありました。
その時私はジュネス・オーケストラという首都圏の大学の選抜メンバーで作るオケで弾いていたのです。(ジュネスは年2回演奏会があり、NHK・TVで全国放送されていた。練習場も予算も全てNHKが出資してくれるという夢のようなアマオケだった)
パート練習にはN響の方がトレーナーで来られていたのですが、その日は代役で都響の首席のKさんがいらしていました。
その時やっていたマーラーの4番を一通り弾かせた後、Kさんが「そのボーイングはあなたが付けたの?」と私にお尋ねになったので、「いえ、この楽譜はNHKから渡されたものなので・・、N響の譜面なんでしょうかね?」と適当な返事をして譜面をKさんに渡したのです。
するとKさんは「へ~、じゃあ徳永先生(当時のN響の首席)かしら?」と言って譜面を一瞥すると、「いや、違うな。プロはこんな汚い譜面の書き方はしないもん」とすかさず仰ったのです。

確かにその譜面はぐちゃぐちゃと打ち消し線を何度も殴り書きしたような汚い譜面でした。
その頃の私はボーイングを丁寧に書くのは初心者臭くて格好悪い、ササッと走り書きの方がプロっぽく見えてカッコイイ、くらいに若気の至りで思っていたので、Kさんに「プロはそんな書き方はしない」と言われてとても恥ずかしくなりました。
(あとで確認するとたしかにその譜面は他所のアマオケから借りてコピーしたものでした)

きれいなボウイングの楽譜

いかにもプロっぽい楽譜の例

それからは、ボーイングやスラーは誰が見ても一瞬で分かるように丁寧にきっちり書くように心がけました。
既にボーイングの付いた譜面をコピーして使うときは、まず印刷以外の書き込みを修正液で全て消して、まっさらにした譜面をコピーして原譜にします。
そして書き込みは鉛筆で2Bより濃いものを使い、訂正は必ず消しゴムで消してから新たに書き込みます。
ボーイングは音符の真上に書き、スラーもどの音符からどの音符にかかっているのか正確に書きます。

あと、折りたたみ譜面台を使っていて思うように書き込みができないということも多いと思うのですが、そういう場合は合奏中に取りあえず書いたものを休憩時間などに綺麗に書き直すしかないです。殴り書きのまま放置はやめましょう。

とにかくオケは弓を忘れても鉛筆と消しゴム忘れたら仕事になりませんので・・。
というわけで、あなたも是非プロと見まがうような綺麗な譜面を作ってみてください!。

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